病院には製薬会社のMR(医薬情報担当者)が製品説明や情報提供のためによく来られます。
そこで、情報提供と同時に、立ち話で
「このような症例には当社の薬が有効ではないか、そのような症例はありませんか」
と聞かれたり、
「当社の薬を使っている症例について教えて欲しい」
などと聞かれることもあります。
その流れで、論文の話になったり、症例報告の話が出てきたりしながら、私とMRさんとで簡単なディスカッションが行われるのを経験してきました。(もちろん個人情報がわからないように)
私だけでなく、他の医師もそのようにされている事が多いと思います。
その時に、往々にして他社のMRさんが近くにおられる事も多くあります。
そうすると、先の方との話が終わった後、別の会社のMRさんが
「先ほどの話、少し聞かせていただきましたが…」
と同じ症例の話になることがありました。
ある時、どうせ同じ症例の話なら、ということで、先のMRさんも含めて一緒に話をしましょう、と一緒に議論してみました。
そうすると、3人寄れば…というように、いろいろな角度から検討できるため、より議論が深まりました。
それなら、私とだけでなく、もっと多くの医師も集めて、会社ももっと増やして、みんなで議論すればより良いのではないか、ということで、この合同症例検討会を企画した、というのが立ち上げの経緯です。
立ち話の延長、普段の議論の拡大、という意味で、
医師が症例を呈示し、それに対して各社にエビデンスを出して頂く
という形にしました。
一社だけの主催する説明会、勉強会は数多くあります。
しかし、それではどうしても情報に偏りが出てしまいます。
同効薬は多くあるわけですが、一つの薬についてのみの情報しかないため、
その情報を聞いた後は、どうしてもその薬を使いがちになってしまいます。
特に経験の浅い医師(私を含め)はそうなる傾向が強いように思います。
(ましてや美味しいご飯を食べさせてもらった後などは、感情的に流されてしまいかねません…)
同時に、経験の浅い、より未熟な医師(私も含みます)は、呈示される情報の処理の仕方が分からない事が多いです。
つまり、メタ解析のようなエビデンスレベルの高い情報と、症例報告のようなエビデンスレベルの比較的低い情報の峻別が出来ず、誤った解釈をすることも多いと思いました。
私自身の反省をこめてそう思います。
それは、結果的に、患者さんの不利益につながります。
より適切な薬があるにもかかわらず、前の日に聞いた薬を処方してしまう。
それではいけない、と思いました。
そのためにも、この会を通じて、医療者も製薬会社も
客観的かつ公平な視点でエビデンスを吟味できるようになる
ということを重視し、目標としています。
客観的かつ公平
そのためにはより多くの製薬会社に参加して頂くのが最重要です。
実際のところ、MRさんの情報にもエビデンスの解釈が誤っていることがあると思います。それについても、より多くの人と検討することで防げるわけです。
また、商業的なプロモーションでないことを明確にするために、第2回からは
会場費などの費用はすべて主催者側が負担することにしています
とにかく、みんなで議論をする。
それがより良い医療への近道ではないかと思うのです。
それに賛同頂ける方は、是非、参加して頂きたいと思います。
または、ご自身で同様の会を、いや、もっとより良い会を
企画して開催して頂ければと思います。